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小児の靭帯修復に4週間かかった症例

 足首の靭帯損傷は完全断裂でも2週間から3週間以内には手術を必要とせずに固定することで完全に治すことができます。ところが今回3週間の固定をしていたにもかかわらずまったく付かない患者さんに遭遇しました。今日はそんなお話です。

 患者さんは7歳の女の子。
 朝、学校に行こうとわき道から大通りに出た際に歩道を走ってきた自転車にはねられて負傷しました。
 救急で担ぎ込まれた病院ではレントゲン検査の結果、骨には異常なしと言われて湿布と包帯で帰されたようですが、痛みが強く歩けないため親に付き添われて事故から2日後に来院されました。
 
 まず患部を観察して皮下出血がかなり出ていることがわかりました。
 量が多い場合はかなり深刻な損傷を想定しておかないといけません。
 案の定、足を持ち上げただけで足関節が不安定なことがわかりました。あわせて靭帯損傷を疑わせる理学所見も得られました。
 この手順で超音波画像診断装置を使って内部を観察することにします。

 観察をはじめるとまず関節内に浮腫がかなりの量溜まっていることがわかりました。

靭帯断裂

 次に靭帯損傷の程度を知るために関節動揺性をチェックします。
 この画像の状態から、画面右側の腓骨を画面下方に押します。靭帯が正常ならば骨同士は固く結ばれているので2つの骨(この場合は距骨と腓骨)の位置関係は変わらないわけです。
 結果は距骨の上端部に引いた線に重なるように腓骨は移動してしまいました。
 よく見ると靭帯も骨に引かれて関節内に移動しています。

靭帯移動

 関節の動揺を確認して圧を抜くと、腓骨は元の位置に戻ります。
 靭帯の断裂部分は画像から解析するとおよそ3箇所。修復が良いとされる靭帯内の断裂もありますが、骨から引き剥がされた様子もあります。いわゆる完全断裂です。しっかりとした素材のテープを使って日常生活にも対応した固定を施して患部の安静を図ることにしました。

 しかし、今回はこれが裏目に出てしまったようです。
 帰宅しても痛みが引かず、翌日別の病院で再検査を受けたそうです。
 今度のレントゲン検査では骨端線という成長している骨にしか現れない軟骨部分の損傷が発見され、ふくらはぎから足先にかけてプレートで支える固定をすることになりました。
 これは靭帯損傷を治すためにも都合の良い固定です。ここまですればまず問題なく付くだろうと安心しました。

 ところが、2週間たってもいっこうに付きません。通常なら1週間から10日もすればほとんど付いてしまいます。プレートだけでは心配になり、さらにテーピングも合わせて固定力を補ってみたのですが、3週間たっても結局付きませんでした。

 知り合いの先生にメールや電話などで問い合わせたところ、一応に皆さんこのくらいの小児の靭帯損傷で手術をしたことはないとおっしゃられます。
 ただ、一人の先生は骨の裂離骨折などがある場合は靭帯の付きが悪いことがあると回答を下さりました。
 実はこの子の靭帯断裂部分にも骨の表面がはがされたような小さな骨片の影が写っていたのです。靭帯が切れるときに大人でも度々見られるもので、靭帯が引っ張られたことで骨を壊してしまうことがあるのです。

 このことがヒントになって骨の修復を早めるための治療、超音波療法(リパス)を取り入れてみることにしました。また、動かせない足の血流を上げるために固定した状態でも出来る足の指の運動(以前にもご紹介した足の指でグー・チョキ・パーをする)を毎日やってもらうことにしました。
 結果は日いちにちと靭帯が見るみるうちに修復し始め、照射と運動開始からわずか4日で動きが改善してきているのが手に取るようにわかるようになり、丸4週間経った時点でほぼ完全に骨が動かなくなったことを確認することができるようになりました。

靭帯修復

 上の写真がその時のものです。外からの力にも靭帯が強固に骨同士を結びつけている様子が確認できました。他の2枚の写真と見比べていただくといかに靭帯の断裂部が綺麗に修復されたかがお分かりになると思います。

 しっかりとした固定をしていたにも関わらず、靭帯修復にまるまる4週間もかかってしまった今回の症例は僕に怪我の奥深さをまたまた思い知らせてくれるものとなりました。
 前回ご紹介した靭帯損傷の男性は40代。彼の靭帯も今回の7歳の女の子の靭帯も全く同じ場所のものです。男性のほうは2ヶ月も固定してなかったにもかかわらずテーピングによる固定で修復に向かい出しました。
 同じ場所を同じように怪我しているのにこの違いはどこから生まれているのか。
 今後の僕の研究課題とさせていただきます。

三勝はり灸接骨院HP : http://www.3show-hari9.com/

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