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家康の秘薬「烏犀圓(うさいえん)」が届きました。

 前回徳川家康の健康法のお話しをした際、家康が自ら作ったという徳川家の秘薬が密封されたまま見つかったという逸話が出てきました。
 実はその薬の成分を調べようとしたところ、現在も家康の時代の製法そのままにこの秘薬が作られていることが判明。さすがに徳川家が作っているわけではないのですが、佐賀にある薬屋さんが家康も参考にしたという中国の漢方書『太平恵民和剤局方』をもとに製造しているというのです。そこでさっそく取り寄せてみました。

 まず箱から取り出した外観です。
    烏犀圓(うさいえん)
 

 なかはなにやら雰囲気のある粘土状のものがいっぱい詰まっています。
    烏犀圓(うさいえん)

 スプーンですくってみると深みのある色合いが。
烏犀圓(うさいえん) 

 まず鼻に近づけると思わず「うわっ」という声がでます。何の匂いでしょうか、かなり香りの強いものが入っていることは間違いありません。
 400年続いている薬なので身体に害はないだろうと口に入れてみることに。
 かなり粘度が高く、しっかりなめないとスプーンに残ります。
 味もかなりのものですが、蜂蜜で固めてあるので舐められないというほどではありません。「う~ん、これを家康さんは舐めていたのかぁ」確かに効きそうな濃密な味でした。

 さっそく成分表から生薬の配合を探ってみました。
 生薬はそれぞれの特徴から役割が決まっています。この役割を組み合わせることで目的の症状に薬を効きやすくするわけです。
分析結果からまず万病の元といわれる風寒を取り除くために身体を温める生薬がたくさん入っていることがわかりました。生姜などピリッとした味のものが多いです。
 次に配合が多いのは当帰でした。補血薬と言って血液を増やす作用があります。婦人科の漢方薬によく使われる生薬で、貧血の人や体力の低下したひとに良く出されます。
 その次が化湿薬の藿香(カッコウ)。湿度を嫌う消化器から湿気を奪い、消化器の働きを回復させるのに良いとされています。梅雨から夏場の蒸し暑いときによさそうですね。
 さらに補気、理気薬という心身を整えるのに良い薬がバランスよく配合されています。
 そして牛黄(ゴオウ)。この方剤のなかでメインになる生薬です。僕が思うに先に挙げた生薬で消化器と肺の働きを高めて、風寒の邪気を追い払い、血の巡りを良くしているのはすべてこの牛黄の働きを助けるためではないでしょうか。これで脳卒中や心疾患などの重篤な疾病を予防しようとしたのだと思います。
 匂いも味も強い11種類の生薬が入れてあっても、蜂蜜で固めることでかなり口にしやすくもなっています。蜂蜜がなかったら煎じても呑めないかもしれませんが、漢方薬というと煎じて飲むものが多いなかで、こういう形体の物は珍しく大変興味深いです。中国では膏剤と呼んでいます。服用、携帯、貯蔵に便利なので慢性病などの長期服用に適していると書物に書かれています。確かにこれなら戦さにも持って行って毎日舐めることができたでしょう。さすが戦国の世を治めた家康さんです。身体に良いものをいかに便利に取りやすくするかまで工夫を凝らしていたのか。すごい人は頭が柔らかい。一瓶なくなるまで毎日舐めてみようと思います。

 *方剤の成分にご興味ある方は、下記をご参照下さい。

 この方剤はこれらを蜂蜜で練って固めてありました。

牛黄
(ゴオウ) 

芳香開竅薬 

竅(キョウ)は「あな」。
心竅を通すことで思惟能力が高まる薬

桂皮発散風寒薬外感風寒を温めて発散させる薬
防風発散風寒薬外感風寒を温めて発散させる薬
当帰補血薬血液を滋養する薬
白芷発散風寒薬外感風寒を温めて発散させる薬
白朮補気薬臓腑とくに脾と肺の気を補い、食欲不振や全身を整える薬
川芎活血止痛薬血行を良くし気のめぐりも改善するため鎮痛効果がある薬
生姜発散風寒薬外感風寒を温めて発散させる薬
陳皮理気薬気のめぐりを良くさせて便秘などの症状を取る薬
人参補気薬臓腑とくに脾と肺の気を補い、食欲不振や全身を整える薬
藿香
(カッコウ)
化湿薬湿気を除いて主に脾の働きをたすける薬

 

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